流体的推力方向制御(Fluidic Thrust Vectoring : FTV)に関する研究

2019年5月23日

推力方向制御(Thrust Vectoring : TV)とは

航空機の姿勢制御は通常,エルロン・ラダー・エレベータ等の各種舵面を操作して機体周囲の気流・圧力に変化を与えることによって行われますが,推力ジェットの向きを変える(偏向する)ことによって機体の姿勢を制御する技術が推力方向制御(Thrust Vectoring : TV)です。

MTV と FTV

推力方向制御を実現するための機構は,大きく2つに分類されます。推力ジェットの排気部に,ジェットの方向を変えるための可動式ノズルを設けて機械的にエンジン排気の方向を変える方式が機械的推力方向制御(Mechanical Thrust Vectoring : MTV)と呼ばれ,軍用機を中心に既に実用化されています。

本研究で開発を目指す流体的推力方向制御(Fluidic Thrust Vectoring : FTV)は,推進器の幾何学的形状は変化させず,推進器の主流に対して制御用の2次流を作用させることで流体力学的に排気方向を変化させる手法です。

FTVノズルの動作原理

本研究で開発を進めているFTVノズルの特徴は,以下の図に示すように,主流に作用させる2次流に主流から分岐させた流れを使用することにあります。2次流の取り込み口に開閉弁を設けて2次流量を制御することにより,主流の偏向角度を制御することが可能です。

FTVノズルの動作原理

FTVの数値シミュレーション例

本研究では,数値計算や実験によって姿勢制御に十分な性能を持つFTVノズルの開発を進めています。開発したノズルは模型飛行機に搭載し,実際に飛行させることによってその性能を実証することを目指しています。

本研究は,2017~2019年度 科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金) 基盤研究(C) 課題番号:17K06940 「航空機姿勢制御における流体力学的推力偏向技術の性能評価システムの開発と応用」によって実施されています。ここに記して謝意を表します。